入社してまだ数ヶ月、あるいは1年。「もう辞めたい」と思ってしまう自分に対して、「こんなの甘えなんじゃないか」と責めていませんか?
結論から言うと、新卒で辞めたいと感じるのは甘えではありません。厚生労働省の調査では大卒新卒者の約3人に1人が3年以内に離職しており、早期退職は決して珍しいことではないのです。
ただ、勢いだけで辞めてしまうと後悔につながる可能性もあります。大切なのは「辞めるべきか・続けるべきか」を冷静に見極めること。この記事では、新卒が辞めたいと感じる主な理由から、辞める・続けるの判断基準、辞めた場合のメリット・デメリット、そして実際に退職する際の具体的なステップまでをまとめて解説します。
「新卒で辞めたい」は甘えではない — データで見る早期離職の実態
まず知っておいてほしいのは、新卒で「辞めたい」と感じるのは自分だけではないということです。数字で見ると、早期離職がいかに一般的かがわかります。
大卒新卒の約3人に1人が3年以内に離職している
厚生労働省が公表している「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」によると、大卒新卒の3年以内離職率は34.9%。入社1年目だけでも12.3%が退職しています。高卒では3年以内に38.4%が離職しており、「3年3割」どころか、すでに3割を超えているのが現実です。
| 時期 | 大卒の累計離職率 |
|---|---|
| 1年目 | 12.3% |
| 2年目 | 24.6%(累計) |
| 3年目 | 34.9%(累計) |
約3人に1人が辞めている以上、「辞めたい」と思うこと自体が甘えとは到底言えません。むしろ、無理に我慢し続けて心や体を壊してしまう方がリスクは大きいのです。
Z世代の退職理由トップは「キャリア・成長への不安」
OpenWorkが2025年に公表した調査によると、新卒3年以内に退職したZ世代の退職理由で最も多かったのは「キャリア・個人成長」に関する不安で、全体の約3割を占めました。「ここにいても成長できない」という実感が、退職の最大の引き金になっているのです。
一方で入社理由のトップは「会社のブランド・成長性」。つまり、就活時は企業の知名度や安定性で選んだものの、入社後に自分自身のキャリアが描けないことに気づいて辞めるという構図が浮かび上がります。これは個人の甘えではなく、就活段階では見えにくい「働く環境」のミスマッチが原因と言えるでしょう。
新卒が辞めたいと感じる主な理由5つ
新卒が「辞めたい」と思う理由は人それぞれですが、大きく分けると以下の5つに集約されます。自分の辞めたい理由がどこに当てはまるか、まず整理してみてください。
仕事内容のミスマッチ
「思っていた仕事と全然違った」というギャップは、新卒の退職理由で最も多いもののひとつ。入社前に想像していた仕事内容と、実際に配属された部署での業務がかけ離れていると、モチベーションが急激に下がります。特に、希望していない部署に配属された場合や、入社説明会で聞いていた内容と実態が異なる場合は深刻です。
ただし、入社直後に任される仕事は下積み的な内容であることも多いため、「まだ本来の仕事に就いていないだけ」というケースもあります。半年〜1年経っても状況が変わらない場合は、上司や人事に相談するか、異動の可能性を探ってみましょう。
人間関係・職場の雰囲気
上司からの理不尽な叱責、同僚と馴染めない孤立感、ギスギスした職場の空気。人間関係の悩みは新卒に限らず退職理由の上位に入りますが、社会人経験が浅い新卒にとってはなおさら重くのしかかります。
パワハラやいじめが存在する場合は言うまでもなく、それがなくても「自分の居場所がない」と感じる状態が続くと精神的に追い詰められていきます。人間関係は配属先や上司の異動によって変わることもあるため、異動願いを出す選択肢も視野に入れてください。
長時間労働・休日が取れない
「毎日終電」「休日出勤が当たり前」といった状況は心身を確実にむしばみます。労働基準法では、36協定を結んでいる場合でも時間外労働は月45時間・年360時間が上限。これを超えている場合は法律違反の可能性があります。
特に新卒は比較対象がなく、「こういうものなのかもしれない」と異常な状態を受け入れてしまいがちです。周囲の友人の話を聞いたり、転職サイトで同業他社の労働環境を調べたりして、自分の状況を客観的に把握しましょう。
給与・待遇への不満
dodaが発表した2025年の転職理由ランキングでは、「給与が低い・昇給が見込めない」が5年連続で1位。新卒の場合、入社時の給与は業界相場として許容できても、昇給ペースが極端に遅い、サービス残業が常態化しているといった状況が続くと将来への不安が増していきます。
とはいえ、新卒1年目の段階で給与だけを理由に転職しても、大幅な年収アップが実現するとは限りません。給与に不満がある場合は、業界全体の給与水準を調べたうえで転職を検討するのが賢明です。
会社の将来性への不安
業績の低迷、業界全体の縮小、経営陣への不信感。自分がこの会社で5年後、10年後にどうなっているか想像できないと、早いうちに見切りをつけたくなるのは当然のことです。特に、評価制度が不透明で昇進の見通しが立たない場合や、ロールモデルとなる先輩社員がいない場合は不安が強まります。
辞めるべきか・続けるべきかの判断基準
「辞めたい」と思ったとき、感情のまま行動するのではなく、一度立ち止まって判断基準に照らし合わせてみてください。
すぐに辞めた方がいいケース
以下のような状況に当てはまる場合は、無理に続ける必要はありません。
パワハラ・セクハラが日常的に行われている場合は、自分の心身を守ることが最優先です。我慢し続けてうつ病などの精神疾患を発症すると、回復に長い時間がかかり、その後の転職活動にも影響します。
労働基準法に違反するレベルの長時間労働やサービス残業が横行している場合も同様です。違法な環境に身を置き続ける義務はありません。
入社時に提示された労働条件と実際の待遇が明らかに異なる場合は、労働基準法第15条により即時に契約を解除できます。求人票で見た内容と現実がまったく違うなら、辞めることに後ろめたさを感じる必要はありません。
すでに体調に異変が出ている場合、たとえば朝起きられない、出勤前に涙が出る、食欲がないといった症状は限界が近いサインです。自己判断だけで済ませず、医療機関を受診することをおすすめします。
もう少し続けた方がいいケース
一方で、次のような状況であればすぐに辞めるのではなく、まず環境改善を試みる余地があります。
辞めたい理由が「なんとなく」で、具体的に言語化できない場合は、まだ判断の材料が足りていない可能性があります。何がつらいのかを紙に書き出してみると、思考が整理されることがあります。
仕事内容自体は嫌いではなく、特定の上司や同僚との関係だけが原因の場合は、異動や部署替えで解決できるかもしれません。人事部に相談するという選択肢を試してからでも遅くはありません。
入社から3ヶ月以内で、まだ業務の全体像が見えていない段階であれば、もう少し経験を積んでから判断した方が後悔が少なくなります。ただし、ハラスメントや体調不良がある場合はこの限りではありません。
新卒で辞めるメリット・デメリット
退職を決める前に、メリットとデメリットの両方を正確に把握しておきましょう。
メリット:第二新卒で転職できる・心身を守れる
新卒3年以内に退職した場合、「第二新卒」として転職活動ができます。第二新卒は社会人としての基礎マナーが身についている一方で、前職の色に染まりきっていないため、企業からポテンシャル採用の対象として見てもらいやすいのが特徴です。
また、心身の健康を守れるという点は何よりも大きなメリットです。つらい環境で無理を続けた結果、うつ病や適応障害を発症してしまうと、回復に数ヶ月から数年かかることもあります。働けない期間が長引けば長引くほど、キャリアへのダメージも大きくなります。
さらに、若いうちであれば未経験の業界・職種にもチャレンジしやすく、キャリアの選択肢が広い点も見逃せません。
デメリット:経歴に影響・転職面接で不利になる可能性
短期離職は履歴書に残ります。面接で「なぜすぐ辞めたのか」は必ず聞かれると思っておいた方がよいでしょう。退職理由を前向きに説明できなければ、「またすぐ辞めるのでは」と警戒されるリスクがあります。
また、次の就職活動は「中途採用」扱いになるため、新卒時のような手厚い研修や教育体制が期待できない場合もあります。即戦力とまでは言わなくても、ビジネスマナーや基本的なPC操作などは「できて当然」として見られます。
1年未満の離職の場合、失業手当(雇用保険の基本手当)の受給条件を満たせない点も注意が必要です。離職前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上必要なため、すぐに転職先が決まらない場合は無収入の期間が生じることになります。
辞めると決めたらやるべき3つのステップ
「やっぱり辞めよう」と決めたなら、感情に任せるのではなく、段階を踏んで行動しましょう。
退職理由を整理し、転職の軸を明確にする
まず、なぜ辞めるのかを自分の言葉で明確に言語化してください。「人間関係がつらかった」だけでは次の職場選びの軸になりません。「チームで協力する文化がある職場で働きたい」「成果が正当に評価される環境がいい」など、前向きな言葉に変換できると、転職活動の面接でもそのまま使えます。
また、次の転職先で絶対に譲れない条件と、ある程度妥協できる条件を分けて書き出しておくと、求人選びで迷いにくくなります。
転職先を探しながら退職時期を決める
可能であれば、在職中に転職活動を始めるのがベストです。転職先が決まった状態で退職すれば、収入の空白期間を最小限にできますし、精神的な安心感も段違いです。
転職市場では2〜3月と8〜9月に求人が増える傾向がありますが、第二新卒向けの求人は通年で存在します。時期にこだわりすぎず、良い求人が見つかったタイミングで動く方が得策です。
退職の意思は法律上、2週間前までに伝えれば問題ありません(民法627条)。ただし、就業規則で「1ヶ月前」と定めている企業も多いため、円満退職を目指すなら1ヶ月前までに伝えるのが無難です。退職の切り出し方に不安がある場合は、退職の切り出し方と伝え方|上司に言うタイミング・場所・例文まとめも参考にしてください。
上司に伝える・どうしても言えないなら退職代行を使う
退職の意思は原則として直属の上司に直接伝えるのが基本です。ただ、新卒の場合、「入社してすぐなのに辞めると言ったら怒られるのでは」「引き止められて断れなかったらどうしよう」という不安から、どうしても言い出せない方が少なくありません。
パワハラ上司で直接伝えるのが怖い場合や、退職を申し出ても受理してもらえない場合は、退職代行サービスの利用が現実的な選択肢になります。退職代行なら、自分で上司に伝える必要がなく、依頼した日から出社しなくて済むケースがほとんどです。
料金は2〜3万円程度が相場で、労働組合型のサービスなら有給消化の交渉も可能です。新卒でも利用者は増えており、退職代行の利用自体が転職先にバレることはありません。
どのサービスを選べばいいかわからない場合は、退職代行おすすめ比較ランキングをチェックしてみてください。費用を抑えつつ交渉力もほしい方には労働組合型の退職代行ランキングが参考になります。退職代行ってそもそも何?という方は退職代行サービスとは?仕組み・種類・選び方をわかりやすく解説から読むのがおすすめです。
まとめ
新卒で「辞めたい」と感じるのは甘えではありません。大卒新卒の約35%が3年以内に離職している今、早期退職は特別なことではなくなっています。
ただし、勢いだけで辞めてしまうと後悔するリスクもあります。まずは辞めたい理由を言語化し、「すぐに辞めるべきケース」と「もう少し続けて様子を見るケース」のどちらに自分が当てはまるのかを冷静に判断してください。
辞めると決めたら、転職の軸を固め、できるだけ在職中に次の仕事を見つけてから退職するのが理想です。どうしても自分で退職を伝えるのが難しい場合は、退職代行サービスに頼るのも立派な選択肢。新卒だからこそ利用をためらう気持ちはわかりますが、第二新卒としてやり直せる今のうちに一歩を踏み出すことが、長い目で見れば自分のキャリアを守ることにつながります。


コメント