「適応障害と診断されたけど、本当に辞めていいのかわからない」。そんな気持ちで検索してたどり着いた方も多いのではないでしょうか。仕事が原因で心が壊れかけているのに、退職という決断にはなかなか踏み切れないものです。
適応障害での退職は「逃げ」ではありません。ただ、勢いだけで辞めてしまうと後悔につながることもあります。この記事では、辞めるべきかどうかの判断基準と、退職前に知っておきたい制度や手続きをまとめました。冷静に考えるための材料として、最後まで読んでみてください。
適応障害と診断されたら、まず知っておきたいこと
適応障害は、特定のストレス原因(仕事、人間関係、環境の変化など)に対して心や体が過剰に反応している状態です。うつ病と混同されがちですが、大きな違いがひとつあります。適応障害はストレスの原因が明確で、その原因から離れると症状が改善しやすいという点です。
つまり、仕事が原因で適応障害になった場合、職場を離れるだけで回復に向かうケースが少なくありません。逆に言えば、原因となっている環境に居続ける限り、症状は長引きやすいということ。ここが判断のカギになります。
症状の出方は人によってさまざまです。不安や気分の落ち込み、不眠、涙が止まらない、出勤しようとすると動悸がする。身体面では頭痛や胃痛、食欲の低下が出ることも。「気の持ちよう」で片づけられるものではなく、医学的に治療が必要な状態です。主治医の診断を受けているなら、まずはその指示を最優先にしてください。
「辞めるべきか」を判断する前に考えたい3つの視点
原因が職場環境にあるなら、環境を変えるだけで改善することも
適応障害の原因が特定の上司や部署にあるなら、異動や配置転換で状況が好転する可能性があります。退職という大きな決断をする前に、「環境を変える」という選択肢を検討する価値はあるでしょう。
人事部や産業医に相談すれば、異動を検討してもらえるケースもあります。診断書があると話が通りやすくなるため、主治医に相談して用意しておくのがおすすめです。ただし異動先でも同じような問題が起こりそうな場合や、会社全体の体質に問題があるなら、退職を視野に入れたほうが現実的かもしれません。
休職という「一時停止」の選択肢
「辞めるか続けるか」の二択に追い込まれがちですが、実はもうひとつ選択肢があります。休職です。休職すれば、職場から離れて心と体を休めながら、冷静に今後のことを考える時間が確保できます。
休職中は健康保険から傷病手当金(給与のおよそ3分の2)が支給されるため、収入がゼロになるわけではありません。「お金が心配で休めない」と感じている方にも、現実的な選択肢になり得ます。休職期間は会社の就業規則によって異なりますが、数か月〜1年程度が一般的。主治医の診断書を提出して申請する流れです。
個人的には、迷っているならまず休職してみることをおすすめします。少し距離を置くだけで、見えなかったものが見えてくることもありますよ。
主治医の意見を判断材料にする
「辞めたほうがいいですか?」と主治医に聞いても、直接的な答えは返ってこないことが多いです。退職するかどうかは医療の判断ではなく、本人の意思決定だからですね。
ただ、「今の環境で働き続けることが治療の妨げになるか」「復職できる見込みはあるか」といった医学的な見立ては聞けます。こうした情報は判断の大きな材料になるはず。診察の際に遠慮せず質問してみてください。
辞めたほうがいいケースと、もう少し様子を見てよいケース
すべての状況に当てはまる正解はありませんが、傾向としてはっきり分かれるポイントがあります。
退職を前向きに検討してよいのは、次のような場合です。ストレスの原因が会社全体の体質や直属の上司にあり、異動しても解決しそうにない。休職して復帰を試みたものの、出勤を再開した途端に症状が再発した。主治医から「この環境では回復が難しい」と言われている。こうした状況で無理に続けても、症状が悪化するリスクのほうが大きいでしょう。
一方、もう少し様子を見てよいのは、異動や業務量の調整がまだ試せていない場合。あるいは、休職制度を使っていない段階。適応障害は原因から離れれば改善しやすい特性があるため、退職以外の方法で原因との距離を取れるなら、まずはそちらを試す意味はあります。
ひとつ注意してほしいのは、「我慢すれば治る」と思い込まないこと。適応障害は根性や気合いで乗り越えられるものではありません。治療と環境調整が必要な状態です。「もう少し頑張れば」と自分に言い聞かせ続けて、うつ病に移行してしまうケースもあります。無理は禁物ですよ。
退職を選ぶ場合に知っておきたい制度
傷病手当金は退職後も受け取れる
意外と知られていないのが、傷病手当金は退職後も継続して受給できるという点。条件は主に3つあります。退職日までに健康保険の加入期間が継続して1年以上あること。退職日の前日までに連続3日以上の休みがあること(待期期間の完成)。退職日に出勤していないこと。
この3つを満たしていれば、退職後も最長1年6か月間、給与のおよそ3分の2にあたる金額を受け取れます。退職前に休職して傷病手当金を受給しておけば、退職後もそのまま継続できる仕組みです。「辞めたら収入がなくなる」と不安に感じている方は、この制度を活用できないか確認してみてください。
自立支援医療制度で通院費の負担を軽くする
適応障害で精神科や心療内科に通院している場合、自立支援医療制度を利用すると医療費の自己負担が3割から1割に軽減されます。対象は通院にかかる医療費と薬代。入院費は対象外ですが、継続的に通院している方にとっては大きな節約になるでしょう。
申請はお住まいの市区町村の窓口で行います。主治医の診断書と健康保険証が必要です。退職後も制度は利用できるため、在職中に申請しておくとスムーズですよ。
失業保険の「特定理由離職者」に該当する可能性
通常の自己都合退職では、失業保険の給付開始まで2か月の待機期間(給付制限)があります。ただし適応障害が原因で退職した場合、「特定理由離職者」に認定される可能性があります。認定されれば、待機期間なし(7日間の待期期間のみ)で失業保険を受け取れるうえ、給付日数も手厚くなることがあるんです。
認定を受けるには、ハローワークでの手続き時に主治医の診断書や意見書を提出するのが一般的。退職前に主治医へ「失業保険の手続きで診断書が必要になるかもしれない」と伝えておくと、退職後の手続きがスムーズに進みます。
退職の伝え方と気をつけたいポイント
退職を決めたら、まずは直属の上司に口頭で伝えるのが基本です。ただし、その上司が適応障害の原因になっている場合は、人事部や産業医に先に相談してもかまいません。無理に原因の本人と対面する必要はないですからね。
退職理由を伝えるとき、「適応障害で」と正直に話すかどうかは自由です。法律上、退職届の理由は「一身上の都合」で問題ありません。ただし、傷病手当金の継続受給や特定理由離職者の認定を目指す場合は、病気が退職理由であることを書面で残しておいたほうが後の手続きが楽になります。診断書を添えて人事に提出するのがスムーズでしょう。
退職日までの過ごし方も考えておきたいところ。有給休暇が残っていれば、退職届の提出後に消化してそのまま退職することも可能です。体調的に出勤が難しい場合は、主治医の診断書をもとに退職日まで休職扱いにしてもらう方法もあります。
自分で伝えるのが難しいと感じたら
適応障害の症状が強い状態で、上司と直接話すこと自体が大きなストレスになるケースは珍しくありません。退職を切り出そうとすると症状が悪化する、電話をかけようとしても手が震える。そんな方に無理をしてほしいとは思いません。
そうした状況で頼れる手段のひとつが退職代行サービスです。あなたの代わりに会社へ退職の意思を伝えてくれるので、上司や人事と直接やり取りする必要がなくなります。有給消化の交渉や退職日の調整まで対応してくれるサービスもあり、「もう会社と関わりたくない」という方には現実的な選択肢になるでしょう。
退職代行の基本的な仕組みや、弁護士型・労働組合型・民間型の違いについては退職代行サービスとは?仕組み・種類・選び方をわかりやすく解説で詳しくまとめています。どのタイプが自分の状況に合うか判断する材料になるので、気になる方は読んでみてください。
具体的にサービスを比較して選びたい方は退職代行おすすめ比較もあわせてどうぞ。料金・口コミ・対応範囲を一覧で確認できます。
まとめ
適応障害で仕事を辞めるかどうかは、簡単に答えが出る問題ではありません。ただ、はっきり言えることがひとつあります。心と体を壊してまで続ける仕事はないということです。
まずは異動や休職で環境を変えられないか検討してみてください。それでも回復が見込めないなら、退職は「逃げ」ではなく「治療の一環」です。傷病手当金、自立支援医療、特定理由離職者の認定など、退職後の生活を支える制度もあります。使えるものはしっかり活用しましょう。
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